市民のための環境公開講座2018 認識から行動へ。学生から社会人までが参加する学びの場。

PART1 生きものの変化と気候変動を知る

レポート

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暑くなる地球と生き物の暮らし

地球上の生き物が減ってしまう「生物多様性の消失」と、化石燃料の大量使用によって起こる地球温暖化は、共に深刻な地球環境問題です。両者は深く関連しあっていて、温暖化が進むと生物多様性が失われ、それがまた温暖化を悪化させるという悪循環が起こることも心配されています。世界各地の環境問題を取材してきた記者の経験をお話ししながら、問題解決のために私たちが今、何をすべきなのかを一緒に考えたいと思います。

井田 徹治 氏

環境と開発の問題を長く取材

井田 徹治 共同通信社編集委員


講座ダイジェスト

地球温暖化は、私たちの生死に関わる次元に

今回のテーマにピッタリの記録的な猛暑を、この夏すでに私たちは迎えていますが、過去を振り返ると、2014年は、当時「歴史上最も暑い年だった」とされ、そんなニュースを私もたくさん書いた記憶があります。ところが、翌2015年は更に暑い年を記録し、次の2016年も暑さの記録を更新。2017年は史上二番目の暑さでしたが、エルニーニョ現象がない年としては最も暑い年となり、また2015〜2017年の3年間平均値では過去最も暑い3年間でした。そして、毎年の熱中症による死者は、90年代よりも増えているという統計もあります。つまり、地球温暖化は、もはや我々の生死に関わる問題なのです。その進行は科学者の予想を超えるスピードになり、今や国連安保理の議題に、つまり安全保障上の問題として扱われ、今行動を取らないと先々の被害額が膨大になるとの認識から、一定の費用を投じて対策を取る国も現れています。

そんな中、温暖化の原因である温室効果ガスが引き起こす別の問題として最近注目を集めているのが、「海洋酸性化」です。人間が排出した二酸化炭素が海水に溶け、海が酸性になってきているのです。これが進行すると、プランクトン、貝、ウニなどが殻を作れなくなったり、魚の嗅覚がおかしくなったり、サンゴが育たなくなります。その結果、海の生態系に悪影響が及んだり、海洋の二酸化炭素吸収力が落ちるため地球温暖化が加速していくと見られているのです。

地球温暖化については、気温の上昇が必ずしも全ての地域で一斉に見られるわけではないために今でも懐疑派がいますが、海洋酸性化の影響は確実に現れます。これらの事態が更に深刻化する前に、私たちは温室効果ガスの排出削減を急ぐ必要があるのではないでしょうか。

日本が無関係ではない、世界の生物多様性消失

遺伝子、種、生態系の3つのレベルで多様な生物が存在することを「生物多様性」と言います。衣食住、医薬品、化学物質、レクリエーションなど様々な自然の恵みをもたらしてくれる生物の多様性なしに、私たちは1日たりとも生きられません。ところが、生息地の破壊、外来種の導入、過剰な採取・乱獲など、私たち人間の手によって生物多様性が急速に失われています。本来、自然界でも種の絶滅は起こるものですが、現在の絶滅速度は、その1千倍とも言われています。

例えば東南アジアでは、森林破壊が急速に拡大しています。世界の自動車需要増を背景に、タイヤなどの原料となるゴムのプランテーションが、その原因の一つです。また、油ヤシの植林目的でも森林伐採が続いています。この木から採れるパームオイルは、化粧品、菓子、石鹸、そして「植物油」とラベルに記載される食品の多くに使われています。これらを消費しているのは誰でしょうか?

生息する111種類の霊長類全てが固有種というマダガスカルでは、森林地帯の9割がすでに破壊され、今もなお続いています。巨大なニッケル鉱山が見つかったためです。その開発費の4割は日本企業が出資し、産出されたニッケルは日本に輸入されています。私たちが使う携帯電話やフォークに使われているかも知れません。また、これと同じようなことは、「天国に一番近い島」とも呼ばれたニューカレドニアでも起こり、やはり日本は、その出資も輸入もしています。

アフリカのコンゴ川流域では、森林伐採が南米アマゾン以上のスピードで進んでいますが、日本はその木材も輸入しています。このように、世界の環境問題と日本人の生活は色々な所で繋がっているのです。

私たちの解決策〜“選択”が生み出す力

第3の環境問題として私が指摘したいのは、「土地の劣化・砂漠化」です。過剰な農耕や放牧、灌漑などがもたらす水資源の減少や、地下の塩分が地表に出てくる「塩類化」のことです。

地球上では、毎年13万㎢の土地が劣化によって使用不能になっていますが、これは年間の森林破壊面積に相当します。つまり人類は、毎年広大な土地を使い物にならないようにしながら、それと同じだけの森も伐採しているのです。

そして、今日お話しした「地球温暖化」、「生物多様性の消失」、「土地の劣化・砂漠化」は、それぞれが互いに関連し合って地球に悪循環をもたらしています。温暖化が進めば、気温上昇で土地の劣化が進み、森林も破壊されて生物多様性が失われます。土地の劣化、生物多様性の消失が進めば、二酸化炭素を吸収する自然が少なくなり温暖化が加速します。そのことがまた、土地の劣化や生物多様性に返ってくる…というメカニズムです。

では私たちは、どのような対策を取ればいいのでしょう。重要なのは、「ものの見方を変える」ということです。自然との付き合い方を変え、自然の恵みの価値を見直し、自然の許容量の範囲内で暮らすように生活を見直すのです。環境問題か、経済成長か…ではなく、自然の限界の中で豊かになる道を探らなければなりません。今の日本人の暮らしを世界中の人がした場合、地球が2.4個必要だと言われています。この負荷を減らして地球1個分の暮らしをするために、私たち一人一人の日々の意識と選択が大切ですが、正しい選択をするために意識して欲しいのが認証制度です。森林管理協議会の「FSC」、水産管理協議会の「MSC」などが良く知られていますが、信頼できる機関が資源管理努力を評価し、商品にお墨付きを与えるものです。日本でも最近広がりつつありますが、このような商品を支持する消費行動を取れば、消費の力で世界を変えることができるのです。他にも、使い捨てのプラスチック製品やレジ袋の使用をやめる、環境問題に熱心な政治家を選ぶ、環境問題に熱心な企業の製品を購入したり、投資をする、再生可能エネルギーで作られた電気を選ぶなど、正しい選択を続けることが世界を変えていくのではないでしょうか。

構成・文:宮崎伸勝/写真:廣瀬真也(spread)